2014年 02月 21日
詩の朗読「木は旅が好き」 |
茨木のり子
木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを
ひとつところに根をおろし
身動きならず立ちながら
花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実を急ぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ
どこか遠くへ
ようやく鳥が実を啄(ついば)む
野の獣が実を噛(かじ)る
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんか借りて
木はある日 ふいに旅立つ ーー 空へ
ちゃっかり船に乗ったのもいる
ポトンと落ちた種子が
<いいところだな 湖がみえる>
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木となって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢みはじめる
旅立つ日のことを
幹に手をあてれば
痛いほどにわかる
木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂泊へのおもいに
いかに身を捩(よじ)っているのかが
木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを
ひとつところに根をおろし
身動きならず立ちながら
花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実を急ぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ
どこか遠くへ
ようやく鳥が実を啄(ついば)む
野の獣が実を噛(かじ)る
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんか借りて
木はある日 ふいに旅立つ ーー 空へ
ちゃっかり船に乗ったのもいる
ポトンと落ちた種子が
<いいところだな 湖がみえる>
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木となって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢みはじめる
旅立つ日のことを
幹に手をあてれば
痛いほどにわかる
木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂泊へのおもいに
いかに身を捩(よじ)っているのかが
by hal_kuzuya
| 2014-02-21 01:14
| 詩の朗読